2008年05月23日

詩集紹介「寺山修司詩集」

寺山修司という人を、私はほとんど名前しか知らなかった。

演劇人であるということはなんとなく知っていた、なんかアングラ演劇とかそういう用語だけは知っていたが、それがなんなのかは知らなかった。いや、今も知らない。

しかし、詩も書く人だとは知らなかった。演劇はよくわからないが、詩なら少しは解るかもしれない、ということで早速詩集を買ってみた。

1935年生まれの人なので今生きていてもおかしくない世代だが、残念なことに1983年に47歳で亡くなっている。その間にもけっこう多くの詩集を残しているようで、今回紹介するハルキ文庫の「寺山修司詩集」にもいくつもの詩集から集められた沢山の詩と、それから短歌や俳句まで収められています。


ああ父知らず故郷知らず
殉死の母の顔知らず

われは恋知る歳となり
恥知る名知る誇り知る

祖国いづこと問はば問へ
我も母の子恋ぐるひ
(「愛国心がないことを悩んでいたら」最後の部分を引用)


強い言葉が七五調のきれいなリズムで迫ってくる。詩人としても強い力を持った人のようです。特に「恥知る名知る誇り知る」ってたたみかけるところが好きです。


ことばで
一羽の鴎を
撃ち落すことができるか

(「けむり」冒頭の部分を引用)


言葉にかける強い思いが伝わってきます。言葉にどれだけのことができるか?それを追い求める姿勢、まさにこれこそ詩人の姿だと思う。

そして、この詩集の最後は寺山修司の遺稿となった「懐かしの我が家」で終わる。


子供の頃、ぼくは
汽車の口真似が上手かった
ぼくは
世界の涯てが
自分自身の中にしかないことを
知っていたのだ

(「懐かしの我が家」最後の部分を引用)


この言葉で彼の詩人としての生涯が終わっている。調べてみると既にこの頃何度も入院しているようなので、自分の死を意識していたみたいで、そんな人間が最後に紡ぎ出したその言葉は、穏やかでどこか潔く、力強い言葉になっていて、まさに自分の人生を締めくくろうとしているように思える。

私達は最後にこんな言葉を残せるだろうか?

いや、ここまで立派でなくてもいいけど、自らを締めくくる言葉を作り上げることができるだろうか。私はこの作品と向き合ってそういう気分にさせられた。

素晴らしい詩人であり、良い詩集だと思う。文庫本だから値段も手頃なので、ぜひ読んでみるといいと思います。

posted by Jack at 21:40 | Comment(5) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年05月09日

詩集紹介「武者小路実篤詩集」

今回は武者小路実篤の詩集です。
同じタイトルで複数の出版社から出ていますが、私の手元には角川文庫のものしかないのでそちらを紹介します。

なんでこれ読んだんだったかな、確かどこかネット上でオススメしてる人がいたので読んでみたのですが、なかなかわかり易くて良い詩集です。

武者小路実篤という人はちょっと変わった人で、理想的な社会の実現を目指して「新しき村」という村を興しています(ただし本人はずっとその村に住んでいたわけではないらしい)。
当初は宮崎県にあったようですが、その後さらに埼玉県は毛呂山町にもうひとつ建設されているようで、その両方とも現存するとのことです。さらに調布市には武者小路実篤記念館というのがあるようなので、お近くの人は行ってみてもいいかもしれません。

理想的な社会を目指す・・・というのはわからなくもないですが、そのために村一つ興してしまうという熱い意志を持った人物武者小路実篤、作品にもその熱さがはっきりと表れています。

この道より
我を生かす道なし
この道を歩く。

(この道より)


実にストレートです。短いので熱い意志だけが強く残って響きます。

そうかと思えば、恋愛ものだって書きます。

我は汝を愛す、
汝は我を愛す。
汝は彼を愛せず、
彼は汝を愛せず。
しかも汝は彼と夫婦とならざるべからざるか。

(恋の悲劇)


まあ、時代が時代だったのだろうなという気もする内容ですが、淡々とした関係の列挙が最後の一文で悲痛な嘆きに変わる。少ない行で実に深く強烈に愛をうたいあげているというか、強いメッセージになっています。

引用の都合で短い作品ばかり紹介していますが、数ページにわたるような長い作品も多く書かれています。「恋人の夢を見て」という作品は4ページにもわたって、恋人に他の男と結婚しないよう訴えかけ、懇願しています。4ページにもわたって書けるのはやはりこの人の熱い性格の成せる技でしょう。こんな風に思われたら女性も幸せなんじゃないかなあと思います。

仮名遣いは昔のもの(最近は歴史的仮名遣いと言うらしい)で書かれてはいますが、内容のほうはあまり小難しいことは言わない、わかりやすい詩人なので、読みやすくするすると読んでいけると思います。

・・・と、紹介を書いてから気付いたのですが、私の持っている角川文庫のものは現在中古でしか手に入らないようです。内容は違う(それでも同じ作品が載っていたりするとは思う)ものではありますが、併せて新潮文庫から出ている詩集の方もリンクしておきます。

posted by Jack at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年04月25日

楽しく短歌入門「かんたん短歌の作り方」

今回はちょっと今までと違う雰囲気のものを紹介してしみましょう。

筑摩書房 枡野浩一著「かんたん短歌の作り方(マスノ短歌教を信じますの?)」

なんか妙なサブタイトルがついてますが、これは元々は少女マンガ誌でやっていた短歌の投稿コーナーをまとめた単行本のようです。

短歌の本ですが、短歌も詩の一形式と言えるし、この本の短歌は短歌といっても難しい言葉(古い言い回しとか)を使わずに現代の言葉で書かれている短歌(著者はこれを「かんたん短歌」と呼んでいる)なので、Jack's Roomで詩を書くにあたって得られることもけっこうあります。

投稿コーナーの運営者(つまりこの本の著者)の枡野浩一は歌人なので、投稿者に対して歌人の目から様々にアドバイスをくれています。それも、あまり気難しさのない気楽な投稿コーナーのようなので、難しいアドバイスじゃなくて基本的なアドバイスが多いです。
短歌に対するアドバイスなので短歌に特化したもののありますが、ウソをついてでも面白く、とか、自分が普段使う言葉でも表現は難しいのに無理に古い言葉を使うなとか汎用的に役に立つものもあるし、Jack's Roomで詩を書くのに七五調を使ってもよいのだし(ゆえに短歌の音に対するアドバイスも役立てられる)、それなりに参考にできるはずです。

そして何より、掲載されている投稿作品がヘンな力の入っていない読みやすいものなので、Jack's Roomで書く人達にとってはけっこう親近感の沸く作品なんじゃないかなと思います。とっつきやすさという点ではとてもよい創作の入門書となり得るでしょう。

そして、投稿コーナーだけにコーナー運営者の苦労もあるようで、最初は一人何点でも投稿okだったのが途中から誌面に応募券を印刷し、それをハガキに貼り付けた上でハガキ一枚につき三首までという制限が設定されたりとか、私がJack's Roomで経験したことと同じような悩みが運営者にもあったりして、そんな部分にも私はちょっと共感できたりします(笑)

ただ、後半主催者の個人的な話が沢山出てくるのは・・・これはちょっと、雑誌で読んでる人じゃないとピンと来ないんじゃないかなぁと思います。いちおう全部読みましたが「短歌の作り方」とは遠い部分も多いです。あと、この人の文体はちょっと好みが別れるかもしれない。

ところで、この本の元になったのは少女マンガ誌「キューティ・コミック」なのだそうですが、実際にこの投稿コーナー読んでいた人っていませんか?いたらリアルタイムで読んでいてどう感じたか、ちょっと聞いてみたいです。

というわけで、知ってる人がいたらコメントください。

posted by Jack at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年04月11日

詩集紹介「ポケット詩集」シリーズ

さて、今回は、掲示板で何人かの方々がおすすめしてくれた「ポケット詩集」です。

調べてみたら、ポケット詩集はシリーズもののようで、三巻まで出ていたので、三巻ともAmazonで購入してみました。

目次を見てみて、なるほどこれは確かにみんながおすすめする詩集だということがわかります。様々な詩人の数々の名作が収められていて、最初に読む詩集としてぴったりだと思います。

詩は詩人によってまるで雰囲気の違うものが生まれてくるし、読む方にも好き嫌いが出てきます。最初にそういう、好みの合わない詩集を手にとってしまったら、詩を読む気がしなくなってしまうかもしれないし、何が自分の好みに合うのか探してみるためにも、幅広い作品の収められた詩集というのは有用だと思います。

この詩集、本の大きさはよくある文庫本サイズなのですが、形としてはハードカバーな本になっています。先日旅行に持っていって思ったのですが、頑丈なので無造作にカバンに放り込んでも折れ曲がったりする心配がない。ポケット詩集の名の通りポケットに入れる・・・にはちょっと硬いので邪魔ですが、カバンに忍ばせて常に持ち歩くのにも向いている作りです。

ちなみに、一巻の最後は以前取り上げた茨木のり子の「自分の感受性くらい」になっています。先日菜の花の話で触れた山村暮鳥の「風景」も第三巻に収められています。

様々な作品が出ているので、どれかひとつを取り上げて解説してみてもこの詩集を説明できなくて、あまり多くのことは言えないのですが、私としては、こう思います。

もしあなたが、まだ自分の好きな詩、好きな詩人に出会えていないと思うなら、まずこの詩集を手にとってみるとよいかもしれません。

もちろん、既にお気に入りのある人にとっても、きっともっと世界を広げて行くのに役に立つことと思いますが。

posted by Jack at 00:10 | Comment(1) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年03月21日

詩集紹介 茨木のり子「自分の感受性くらい」

茨木のり子というと、覚えている方もいると思うけど、先日ここで取り上げた「詩のこころを読む」の著者の方である。あれは詩の入門書として素晴らしい本だと思ったが、あの本で数々の詩を解説してくれた本人も詩人であり、なおかつこの人はあの本の中では自作を取り上げていない。

まあ、他人の作品と一緒に自作を解説するのはやりづらいだろうし、自作を紹介しなかったのはもっともなんだけれど、「詩のこころを読む」のような本を書いたのが茨木のり子以外の人であったら、きっと茨木のり子の作品が紹介されていたことと思います。

今色々調べてみたら、なんかテレビの金八先生で作品が紹介されたこともあるそうです。誰か見たことある人いる?

で、その茨木のり子の詩集です。

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ


この強烈な一言で締める表題作「自分の感受性くらい」はあまりにも有名なので、色々なところで紹介されているし、この詩集を手に取ったことのない人でも知っていると思う。素敵な作品です。

しかし私はその表題作よりも、詩集の先頭にあったひとつ、「詩集と刺繍」に驚いた。この作品はこんな風に始まる。

詩集のコーナーはどこですか
勇を鼓して尋ねたらば
東京堂の店員はさっさと案内してくれたのである
刺繍の本のぎっしり詰まった一角へ


刺繍と詩集、同音異義語をつかった言葉遊び。これ自体はよくあることである。ここからの展開も素敵、刺繍と詩集が同音であることに着目して、音が同じなのだから店員は悪くないとしながらも、女性がししゅうといったら刺繍と決め付けるのはどうか?と考えてみたり、案内されるままに刺繍の本を手にとってみるというちょっと小心な面(こっちの刺繍じゃないって文句言わない)も見せながら、やがて、同じ音で結ばれた刺繍と詩集を結び付けてゆく。

そうして最後の一連

たとえ禁止令が出たとしても
下着に刺繍をするひとは絶えないだろう
言葉で何かを刺しかがらんとする者を根だやしにもできないさ
せめてもニカッと笑って店を出る


「言葉で何かを刺しかがらんとする者を根だやしにもできないさ」この一言に痺れた。この行だけ他と比べて明らかに長くもあり、また力が入っているように感じる。「言葉で何かを刺しかがらんとする者」という比喩も素敵。詩人って確かにそういうものかもしれない。
たぶんこの一行は作者自身が「キメ」として意識した部分なんじゃないか。この一行によって、続く最終行のように「ニカッと」笑う作者の様子がはっきり伝わってくる。こういう決めゼリフが私は大好きです。

他にも素敵な作品がたくさん詰まっています。いちおうAmazonのリンクも張っておきますが、有名な詩集だし図書館でも借りられるんじゃないかと思います。まだ読んでいない方はぜひともこの機会に読んでみて欲しい、きっとあなたの世界が広がります。

posted by Jack at 15:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年03月07日

おいしい詩集 ハルキ文庫 「長田弘詩集」

もうだいぶ前のことだけど、掲示板でみくがオススメしてくれた長田弘の詩集です。この「ハルキ文庫」の詩集は既刊の複数の詩集から選別した詩集のようで、なんというか、「現代詩文庫」シリーズみたいな作品が沢山詰まってるタイプの本です。

現代詩文庫は中身が詰まり過ぎで読み辛い(しかしボリューム的には最もお得な詩集のシリーズだと思う)ですが、こちらはそんなに多過ぎもせず、適度に読めます。普通の詩集(作品数はそれほど多くなく、ひとつひとつを読みやすい)と現代詩文庫(ぎっしり詰まってお得だけど読み辛い)の中間くらいの感じのシリーズです。安いし、入門編的にはちょうどいいですね。

さて、それでは長田弘詩集の中身の話に入っていきましょう。

元々掲示板でオススメしてもらったのは「一日の終わりの詩集」という詩集だったのだけど、そっちとはトーンがだいぶ違います、こちらは明るくて軽快な感じの作品が多く、作品数ではこっちの方がだいぶ多いのだけど、それでも読み易い。

この詩集には料理を扱った作品がけっこう多くて、料理のレシピであるとか、料理の話なんかが淡々と流れていって、最後に締める。という感じのスタイルで、料理について話している部分が読み易いので終盤の部分にまですんなり入れて、そうやって運ばれて来た締めの部分できっちり印象を残して締める。同じスタイルがいくつも見られるので、それは多分このひとの得意なスタイルのひとつなんだと思います。


>味をよくしみわたらせて、
>天ぷらを熱いめしにのせてつゆをかけたら
>あとちょいと蓋しておいて食べる。
(天丼の食べかた)


食べ物の話をすると、おなかが空いてきた。という人がいるけど、確かにこれはおなかの空いてくるような言葉です。始めて読んだときは無性に天丼が食べたくなった記憶があるし、今でも天丼を食べる度に思い出します。

食べ物の話っていうのは、話としての、文字としての言語としての情報以上に訴えかけるものがあるのかもしれない。なんていうか、食事って誰でもすることなので、みんなにイメージが浮かびやすいんじゃないかなと思います。

また、私が天丼を食べる度に思い出すように、日常的な食事の話は読んだ人が再び思い出しやすい作品になるようです。


くうか
くわれるか、
人生は食事だ。
(殺人者の食事)


こんな素敵な言葉が使えるくらいに、食のイメージの使い方がうまい人です。うまい表現がたくさん並べられているので、一冊読み終えると自分も食べ物について書いてみたくなります、自分も書いてみたくなるくらいに、この詩集を読むと、食事や食品や料理について、見えてくるイメージが大きく広がってきます。

素敵な作品がぎっしり詰まって、持ち歩きに便利な文庫本サイズで、値段も740円(税別)と安めなので、これはみんなにオススメしたい詩集です。人によって好みはあるだろうけど、うまい作品が集まっているのでこの値段なら特に損したと思うこともないと思うし、好みに合う人だったら、しばらくは持ち歩いていたいような、そんな素敵な一冊になるでしょうから。

ということで、これはぜひオススメです。
※同じ「長田弘詩集」って名前で他の出版社からも詩集が出ているから、買うときは注意しないと、ここで紹介した詩集とは異なる詩集を買ってしまうかもしれません。まあそれも面白そうですが。


posted by Jack at 02:40 | Comment(2) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年02月22日

これは必読 茨木のり子「詩のこころを読む」

さて、二冊目の紹介にしていきなり詩集じゃない本が出ます。

とはいえ、詩集ではないですがこれから様々に詩を読んでいく方にぜひ読んで頂きたい本なので、他の詩集を紹介する前にこの本を紹介しておきたかったのです。

さて、この岩波ジュニア新書「詩のこころを読む」ですが、著者は茨木のり子、詩人の方です。この人自身の作品も素敵なのですが、この本では茨木のり子自身の作品ではなく、他の人の作品を紹介しています。

こういう、詩について書かれた本では、数多くの詩を引用することが多く、また、色々な詩人の作品を扱うので、当てずっぽうに詩集を買うよりも手軽に、様々な作風に触れることができます。

そして、この本はジュニア新書に収められていることからも解るように、若い人達向けに解りやすく書かれています。詩について解り易いという本というのはとても貴重です。詩の入門書らしきタイトルを見つけて手にとってみても、難しい話が延々と続けられていて「やっぱり詩は難しいのか」と思ってしまうことは私にはよくあります。しかし、この本から始めれば難しい思いをせずに詩の世界に入っていけると思います。

本物の詩人が詩について易しく解説している、詩人の目で詩を読んでいる。ひとつの作品からどれだけ多くのことが読めるのか、またどれだけ多くのことが書けるのか、よくわかります。

解り易い作品から難解な作品まで様々紹介されています、私はあんまり難解な作品はあまり得意ではないのですが、難解な作品でも茨木のり子が丁寧に解説してくれます、時には作者がどのような人であったか、その作品が書かれた頃作者はどうしていたのかなど作品の外の部分にまで踏み込んで教えてくれます。そのような話を通して、読者は自然に詩の世界に入り込んで行きます。

茨木のり子が私達を詩の世界へ導いてくれるというわけです。

もちろん、詩に正しい読み方というのがあるとも思えないので、この本でやっているのは茨木のり子の読み方ですが、しかし、多くの方にとって違和感のあるような読み方はしていないと思います。少なくとも参考にはできるはず。

詩を読むことは詩と向き合う最初の一歩です。詩を書くためにはまず読むことが欠かせません。読む力を身に付けることができれば、一篇の詩があなたにもたらすものが、今までよりずっと大きなものになってきます。

値段も手ごろで入手しやすい本なので、これから詩を書きたいという方はぜひ一度手にとって欲しい一冊です。


posted by Jack at 00:10 | Comment(1) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年02月08日

オマル・ハイヤーム「ルバイヤート」

さて、詩集紹介の一回目は、私のいちばんのお気に入りの詩集で、なおかつ安価で短く読みやすいものにしてみました。

オマル・ハイヤーム作、小川亮作訳「ルバイヤート」、ルバイヤートとはペルシアの四行詩「ルバーイイ」の複数形の意とのこと、つまりそのまんま「四行詩集」って言っているわけですね。

作者オマル・ハイヤームは11世紀ペルシアの詩人だそうで、えらく昔の作品ですが、口語体の日本語に訳されているのであまりそういう年月は気になりません。

私と「ルバイヤート」との出会いは、今から八年くらい前、当時よく通っていた吉祥寺のバーの、お客さんの一人が作ったお店のウェブサイトでした。

もう随分前に閉店してしまったお店なので、サイトはもうなくなっているのですが、そこのトップページにはこんな言葉が並んでいました。

恋するものと酒飲みは地獄へ行くという
根も葉もないたわ言に過ぎぬ
恋する者や酒のみが地獄に落ちたら
天国は人影もなくさびれよう!


これは、「ルバイヤート」の中に収められている第87歌です。バーのサイトに載せるにはぴったりな作品と言えるでしょう。「ルバイヤート」にはこのような、お酒に関する作品がいくつもいくつも出てきます。それゆえに、ルバイヤートの名前は日本においてもワインのブランド名になっていたりするほど、お酒との結び付きの強い詩集なのですが、ただ陽気な酒飲みの歌というわけではありません。

さあ、ハイヤームよ、酒に酔って、
チューリップのような美女によろこべ。
世の終局は虚無に帰する。
よろこべ、ない筈のものがあると思って。


このように、無常観っていうか諦観っていうか、ハイヤームの感じている虚しさという感情がお酒と共に描かれています。なんていうか、1000年前だって、人は飲まなきゃやってられなかったんですね。もっとも、翻訳なので訳者の影響もあるのかもしれませんが、この感覚と酒のバランスが余計にハイヤームの感情を際立たせています。

まあ、たまに「大丈夫かこいつ?アル中じゃないのか?」と思うような作品もあったりしますが(笑)

「ルバイヤート」にはこんな素敵な四行詩が全部で143作品収められています。ひとつひとつが短いので電車の中とか、ちょっとした空き時間にでもゆっくり味わって読みやすく、薄い文庫本なこともあって持ち歩くのにも良い詩集です。

短い詩は読み易いので、あまり詩集を読んだことがない人や、ゆっくり詩を読む時間が取れない人なんかにぜひおすすめです。この「ルバイヤート」なら、短時間にでも、素敵な作品に出会うことができるはずです。

なお、青空文庫でも読めます。

※記事中の引用部分は全て岩波文庫の小川亮作訳「ルバイヤート」から引用させていただきました。
posted by Jack at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

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