先日の記事の最後で、十周年だねって話をしました。
記念に何かやるとかそういうのもいいけど、今日はちょっと改めて、十年間Jack's Roomをやってきて感じたことをしゃべってみる。もちろん十周年の記念日にも振り返ることになると思うけれど。
1996年の末に始まったJack's Room、当時まだ高校生だった私、まだまだつたない技術しか持たなかった(今でもデザイン周りはつたないですが)私の作った小さなウェブサイト、それがJack's Roomの始まりでした。
もしかして、もう今の若い子達は知らないかもしれないけれど、当時はインターネットそのものが流行り始めの頃で、猫も杓子もといった調子で個人のウェブサイトが乱立していた時代です。サイトの紹介がずらずら並んだ本とか一杯出てました。本を買っていないので判らないけれど、今はもう残ってないんじゃないかな、そういう本は。
ちなみにJack's Roomも紹介させてくれって話がいくつか来てました。つまりそれは、とにかくURLをたくさん載せたかったのでしょう。当時のJack's Roomなんてなんにもなかったのだから。
山ほどの個人サイト、どこを見たって見た目はそんなに立派でもないし、まだモデム全盛だった時代には文字ばかりで作られたサイトは「軽いサイト」として歓迎されていたくらい。面白いものもあったけど、それ以上につまらないものがネットの世界に沢山あふれていた時代。あんなにあったつまらないサイトはどこへ行ってしまったのでしょう。
つまらないサイトが減る分にはノイズが減っていいことじゃないかと、そういう考え方もあると思うけれど、私にとってはそれは、つまらないことがやりにくくなったのかな、って感じちゃいます。
現代では企業のサイトとか、お金もかかってますから高機能できれいなサイトが沢山あります。そんなネットの世界に慣れてしまった人々を相手に、個人で魅力的なサイトを提供するのは困難になってきているでしょう。十年前のサイトなんて文字とちょこっとの画像があれば様になったんですから。
だから今では個人のサイトは(以前に比しては)あまり目立ちません、全体数が減っているのかどうか手元にデータがないけど、減っているかもしれません。
代わりに個人発のコンテンツはblogや、mixiとかのSNSの上に移っているように見えます。blogやSNSの運営元が金をかけて開発したきれいで高機能なシステムを使えるわけですから、見た目の貧弱さとかが問題になることはないでしょう。誰もが同じ見た目になる分だけコンテンツの質そのものが問われるかもしれませんが、十年前よりはるかに簡単に個人が情報発信できるようになっているはずです。
簡単できれいなものが作れるならば、難しくて貧弱なものなど誰も作りたくないですよね。そうして、個人が1からサイトを作る必要がなくなって来たのですね。作っても見てもらえないかもしれない、blogやmixiに目が慣れた人には見た目だけで面白くなさそうに見えてしまうでしょうから。
わざわざ作らなくていい、いい時代になりました。
でも、なんだか寂しい。
あの日の十七歳の私が今ここにいたら、どうしていただろう?
きっと、Jack's Roomは作られなかった。
ここみたいなblogだけ立ち上げて、誰も読まない文章ばかり書き続けていたでしょう。
それとももう少し世間知らずで自信過剰な十七歳だったとして、Jack's Roomを作り上げていたら、貧弱なサイトに誰も見向きしないことに愕然としたでしょうか。
十年前のあの時代だからこそ、Jack's Roomは生まれ得た。
誰もが、なにか新しいことを始められそうな空気に(それも無根拠に)満ちていたあの時代。
今みたいに、どこかの企業のラベルを貼られる事なく、自分の色で自分を見せていた(そしてそうするしかなかった)日々。
ほとんどのことはあの頃より進化したし、便利になった。このblogの右側にある「Jack's Roomの人々」を見れば解るだろう。この人達のどれだけが、blogのような高機能なシステムなしにでも自分のサイトを築いただろうか。ただし、どこかの企業のラベルを貼られることと引き換えに。
あの時代に戻りたいとは、私でさえも思いません。
ただ、ここにはあの頃の空気があります。手作り感覚、とでも言えばいいですかね。それでいて、システム化を果敢にやっていくことでどうにか生き残りを図っています。
あと何年持つでしょうか。そしていつか、このサイトが終焉を迎える日に、ネット上の世界はどのように変化しているでしょうか。先のことを考えるにはこの世界の時間は速すぎます。
なんだかよく解らないことを語ってしまいました、それでは、Jackでした。
2006年5月
自宅にて
// Jack