2008年03月21日

詩集紹介 茨木のり子「自分の感受性くらい」

茨木のり子というと、覚えている方もいると思うけど、先日ここで取り上げた「詩のこころを読む」の著者の方である。あれは詩の入門書として素晴らしい本だと思ったが、あの本で数々の詩を解説してくれた本人も詩人であり、なおかつこの人はあの本の中では自作を取り上げていない。

まあ、他人の作品と一緒に自作を解説するのはやりづらいだろうし、自作を紹介しなかったのはもっともなんだけれど、「詩のこころを読む」のような本を書いたのが茨木のり子以外の人であったら、きっと茨木のり子の作品が紹介されていたことと思います。

今色々調べてみたら、なんかテレビの金八先生で作品が紹介されたこともあるそうです。誰か見たことある人いる?

で、その茨木のり子の詩集です。

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ


この強烈な一言で締める表題作「自分の感受性くらい」はあまりにも有名なので、色々なところで紹介されているし、この詩集を手に取ったことのない人でも知っていると思う。素敵な作品です。

しかし私はその表題作よりも、詩集の先頭にあったひとつ、「詩集と刺繍」に驚いた。この作品はこんな風に始まる。

詩集のコーナーはどこですか
勇を鼓して尋ねたらば
東京堂の店員はさっさと案内してくれたのである
刺繍の本のぎっしり詰まった一角へ


刺繍と詩集、同音異義語をつかった言葉遊び。これ自体はよくあることである。ここからの展開も素敵、刺繍と詩集が同音であることに着目して、音が同じなのだから店員は悪くないとしながらも、女性がししゅうといったら刺繍と決め付けるのはどうか?と考えてみたり、案内されるままに刺繍の本を手にとってみるというちょっと小心な面(こっちの刺繍じゃないって文句言わない)も見せながら、やがて、同じ音で結ばれた刺繍と詩集を結び付けてゆく。

そうして最後の一連

たとえ禁止令が出たとしても
下着に刺繍をするひとは絶えないだろう
言葉で何かを刺しかがらんとする者を根だやしにもできないさ
せめてもニカッと笑って店を出る


「言葉で何かを刺しかがらんとする者を根だやしにもできないさ」この一言に痺れた。この行だけ他と比べて明らかに長くもあり、また力が入っているように感じる。「言葉で何かを刺しかがらんとする者」という比喩も素敵。詩人って確かにそういうものかもしれない。
たぶんこの一行は作者自身が「キメ」として意識した部分なんじゃないか。この一行によって、続く最終行のように「ニカッと」笑う作者の様子がはっきり伝わってくる。こういう決めゼリフが私は大好きです。

他にも素敵な作品がたくさん詰まっています。いちおうAmazonのリンクも張っておきますが、有名な詩集だし図書館でも借りられるんじゃないかと思います。まだ読んでいない方はぜひともこの機会に読んでみて欲しい、きっとあなたの世界が広がります。



posted by Jack at 15:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年03月14日

よく見てみること

こんばんは、Jackです。

最近はすっかり暖かくなってきました。

もうしばらくすれば、東京も桜の季節を迎えることでしょう。

そういえば去年の今ごろに、Jack's Room内で桜を扱った作品を探してみたことがありました。

http://jacksroom.seesaa.net/article/37358539.html

こんな風に、華やかな桜のイメージは詩で表現するにもとてもよい題材です。日本人なら誰でも知っている花だから、読む人にイメージを描いてもらいやすいところもよいと思います。

ちょうどこれから桜の咲く季節だし、桜を書いてみたいなと思った方もいるんじゃないでしょうか?

それとも、もうここまで読んで言葉が頭の中を駆け巡り始めている人とかもいるかな?

それもいいのですが、せっかくこれから桜が咲く季節なので、桜を書くならぜひ一度桜をじっくり眺めてみてほしいなと思います。たぶん、日本人ならほとんど誰でも、わざわざ見に行かなくても桜と聞いただけで華やかなピンク色に包まれた光景を思い浮かべることができるとは思いますが、それだけじゃなく、実際に見たほうが楽しいよ、と。



ええと、ここでちょっと一息ついて、桜について詩を書いてみたい人も、そうでない人も、ちょっと桜の咲く光景を思い浮かべてみてください。満開の桜が立ち並ぶ華やかな光景を思い浮かべてみてください。



いいですか?


で、次に引用するのは、去年の記事でも取り上げたすみれさんの「花吹雪」という作品


満開のさなかにも
桜の花びらは はらはら散っている


頭の中に満開の桜を思い描いて、散る花びらまではっきり浮かんできましたか?

言われてみれば、ああそうか、そういえば花びらが散っている。とわかるのですが、特にまだ桜の咲いていない今の時期では、言われて始めてはっとした人もいるんじゃないでしょうか?

いやもちろん、「桜が散るなんてそんなの当たり前だろう?」としか思わなかった人もいると思うけど、これはまあ一例なのでその場合は気にしないでください(笑)

満開の桜を思い浮かべて、舞い落ちる花びらを思い描けなかった人でも、実際に満開の桜並木の中に立ってみれば、もちろん花びらが絶え間なく散ってくることにはすぐ気付くでしょう。

そして、たぶん他にも発見があるはずです。

桜を書くに当たって、漫然と頭の中に思い浮かべるより、実際に桜を見てくるほうが、読む人へ桜のイメージを強く想起させるだけの情報量が得られるはずです。少なくとも、見ずに書くよりはきちんと眺めて書いたほうが、書きやすくなるんじゃないかなと思います。

もちろん、現実に今目の前にある桜じゃなくて、記憶の中の桜を描きたい場合もあるとは思いますが、そういう場合でも、記憶を鮮やかに甦らせるひとつの手段にはなるんじゃないかなって思う。

そんなわけで、せっかくこれから花咲く季節、みんな外へ出て花でも眺めてみませんか?

ちなみに私は、こんどの週末は近所の浜離宮まで菜の花を見に行こうかなと思っていたりします。
posted by Jack at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩の書き方、読み方

2008年03月07日

おいしい詩集 ハルキ文庫 「長田弘詩集」

もうだいぶ前のことだけど、掲示板でみくがオススメしてくれた長田弘の詩集です。この「ハルキ文庫」の詩集は既刊の複数の詩集から選別した詩集のようで、なんというか、「現代詩文庫」シリーズみたいな作品が沢山詰まってるタイプの本です。

現代詩文庫は中身が詰まり過ぎで読み辛い(しかしボリューム的には最もお得な詩集のシリーズだと思う)ですが、こちらはそんなに多過ぎもせず、適度に読めます。普通の詩集(作品数はそれほど多くなく、ひとつひとつを読みやすい)と現代詩文庫(ぎっしり詰まってお得だけど読み辛い)の中間くらいの感じのシリーズです。安いし、入門編的にはちょうどいいですね。

さて、それでは長田弘詩集の中身の話に入っていきましょう。

元々掲示板でオススメしてもらったのは「一日の終わりの詩集」という詩集だったのだけど、そっちとはトーンがだいぶ違います、こちらは明るくて軽快な感じの作品が多く、作品数ではこっちの方がだいぶ多いのだけど、それでも読み易い。

この詩集には料理を扱った作品がけっこう多くて、料理のレシピであるとか、料理の話なんかが淡々と流れていって、最後に締める。という感じのスタイルで、料理について話している部分が読み易いので終盤の部分にまですんなり入れて、そうやって運ばれて来た締めの部分できっちり印象を残して締める。同じスタイルがいくつも見られるので、それは多分このひとの得意なスタイルのひとつなんだと思います。


>味をよくしみわたらせて、
>天ぷらを熱いめしにのせてつゆをかけたら
>あとちょいと蓋しておいて食べる。
(天丼の食べかた)


食べ物の話をすると、おなかが空いてきた。という人がいるけど、確かにこれはおなかの空いてくるような言葉です。始めて読んだときは無性に天丼が食べたくなった記憶があるし、今でも天丼を食べる度に思い出します。

食べ物の話っていうのは、話としての、文字としての言語としての情報以上に訴えかけるものがあるのかもしれない。なんていうか、食事って誰でもすることなので、みんなにイメージが浮かびやすいんじゃないかなと思います。

また、私が天丼を食べる度に思い出すように、日常的な食事の話は読んだ人が再び思い出しやすい作品になるようです。


くうか
くわれるか、
人生は食事だ。
(殺人者の食事)


こんな素敵な言葉が使えるくらいに、食のイメージの使い方がうまい人です。うまい表現がたくさん並べられているので、一冊読み終えると自分も食べ物について書いてみたくなります、自分も書いてみたくなるくらいに、この詩集を読むと、食事や食品や料理について、見えてくるイメージが大きく広がってきます。

素敵な作品がぎっしり詰まって、持ち歩きに便利な文庫本サイズで、値段も740円(税別)と安めなので、これはみんなにオススメしたい詩集です。人によって好みはあるだろうけど、うまい作品が集まっているのでこの値段なら特に損したと思うこともないと思うし、好みに合う人だったら、しばらくは持ち歩いていたいような、そんな素敵な一冊になるでしょうから。

ということで、これはぜひオススメです。
※同じ「長田弘詩集」って名前で他の出版社からも詩集が出ているから、買うときは注意しないと、ここで紹介した詩集とは異なる詩集を買ってしまうかもしれません。まあそれも面白そうですが。


posted by Jack at 02:40 | Comment(2) | TrackBack(0) | 詩集/書籍紹介

2008年03月01日

詩に関する記事の一覧

詩集/書籍紹介と詩の書き方/読み方の記事の一覧です。このエントリは随時更新していきますので、ここをブックマークしておくと最新が追えます。

詩集/書籍紹介
紹介する内容がちょっと偏ってますが、全て自分で実際に読んだ本について紹介しています。

1.オマル・ハイヤーム「ルバイヤート」

2.これは必読 茨木のり子「詩のこころを読む」

3.おいしい詩集 ハルキ文庫 「長田弘詩集」

4.詩集紹介 茨木のり子「自分の感受性くらい」

5.詩集紹介「ポケット詩集」シリーズ

6.楽しく短歌入門「かんたん短歌の作り方」

7.詩集紹介「武者小路実篤詩集」


詩の書き方/読み方
詩の書き方とそれに通じる読み方について、自分なりに話しています。そんなに大したものではないけど、初めて書く人には多少のヒントには、なるかも?

1.落ち着いてゆっくり書きましょう

2.読む時も落ち着きが大事

3.たまには手書きに帰ってみる

4.よく見てみること

5.見えないものを見出す

6.書けないときにできること

7.私の気分転換法

8.いつか書きたい作品
posted by Jack at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 番外編

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